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外科手術を選択しない方へ

 

脊柱管狭窄症について、徒手療法を受ける際には、以下のような心構えを持って取り組んでいただけると良い結果につながります。

 

脊柱管とは、椎骨によって形成されている空洞です。この空洞が狭くなる原因として、骨そのものが大きく変形することは稀で、多くの場合は骨のわずかなズレによるものです。このズレは、筋肉や靭帯の硬さや弱さが原因となって起こるため、徒手療法で改善が可能な部分となります。

ですので、脊柱管狭窄症であっても、諦めずに積極的に取り組むことで、骨のズレを矯正し、痛みや痺れの改善を目指すことができます。そのためには、目指すゴールを明確にし、ご自身でも意識的に改善へ向けた行動をしていただくことが重要です。

 

受動的な姿勢では、十分な機能回復を実現することが難しいことをご理解ください。お身体は大切な財産です。もし完全な機能不全になってしまった場合、どれほどの治療費をかけても元の状態に戻すことは困難です。

一定期間は「改善するために自分から取り組む」という意識を日常生活の中で最優先にしていただければと思います。

 

症状が改善されるまでは、禁忌事項を守っていただくことが重要です。特に、指定された運動以外の活動(長時間の座位や歩行、スポーツなど)は避けてください。また、生活習慣における食事や休養にも注意を払ってください。

 

なお、お仕事や家庭の事情により、身体への負荷を軽減することが難しい場合、100%の機能回復を達成するには想定以上の時間がかかる場合があります。この点についても予めご理解いただければ幸いです。

 

私たちは、患者様の機能回復を支えるトレーナーであり、パートナーでありたいと考えています。改善を目指すには、セラピストと患者様が二人三脚で協力しながら取り組むことが必要です。

以上の点をご理解のうえ、一緒に最善を尽くしていきましょう。

外科手術を既に受けられた方、これから手術を受けられる方へ

外科手術を受けた後でも、時間が経つと症状が再発することがあるというお話を耳にすることがあります。そのような体験から、外科手術を避けたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、手術はあくまでも身体の構造的な問題を解決するための手段であり、他の選択肢がない場合に行われるものです。

 

手術をすればすべての問題が解決する、という認識をお持ちの方が多いかもしれませんが、そうとは限りません。長い間続いてきた体の使い方の癖や姿勢の悪さが、手術だけで自動的に改善されるわけではないからです。

 

例えば、過剰に使われていた筋肉と、あまり使われていなかった筋肉のバランスの乱れは、意識的に適切なトレーニングを行わない限り改善するのは難しいでしょう。また、長年にわたる不良姿勢や体の動きの癖が原因で体内に狭窄が起きていた場合、それが改善されなければ短期間で再び同じ症状が現れる可能性があります。これは運動力学的に見ても自然なことです。

 

さらに、元の症状とは異なる場所に狭窄が起きたり、ヘルニアの場合などでは別の箇所に症状が現れることもあります。

したがって、外科手術は最終的なゴールではなく、むしろ機能回復に向けた取り組みを始めるためのスタート地点と考えることが大切です。

脊柱管狭窄症・腰椎すべり症

 

脊柱管狭窄症とすべり症は、どちらも腰や背中に痛みや不快感を引き起こす背骨に関連する疾患ですが、それぞれ原因や症状に違いがあります。

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どちらも早期の診断と適切な治療が重要です。症状が軽い場合は運動療法やリハビリが効果的な場合もありますが、症状が重い場合には手術が選択されることもあります。

1. 脊柱管狭窄症
 

原因:
 

脊柱管とは、脊髄や神経が通るトンネルのような構造を指します。脊柱管狭窄症では、このトンネルが加齢や変形性疾患などによって狭くなり、神経が圧迫されることで痛みやしびれが生じます。

 

主な原因:
 

椎間板の変性(加齢によるすり減り)
椎間板ヘルニア
骨の変形や骨棘(骨のトゲ)の形成
靭帯の肥厚(靭帯が厚くなり、脊柱管を狭める)

 

主な症状:
 

腰から足にかけての痛み、しびれ、脱力感
長時間歩くと症状が悪化する(間欠性跛行)
前かがみになると症状が軽減する(例えば、買い物カートを押す姿勢)

 

2. すべり症
 

原因:
 

すべり症は、背骨(椎骨)が正常な位置から前後にずれてしまう状態です。このずれによって、神経を圧迫することがあります。多くの場合、加齢や腰に負担がかかる動作(重いものを持つなど)が原因です。

主な種類:

変性すべり症(加齢によるものが多い)
分離すべり症(若い頃にスポーツなどで背骨にストレスがかかった場合に多い)

 

主な原因:

 

椎間関節や靭帯のゆるみ
椎骨の疲労骨折(特に分離すべり症の場合)

 

主な症状:
 

腰の痛み(動作時に増悪することが多い)
下肢へのしびれや痛み(神経が圧迫される場合)
長時間の立位や後ろに反らす動作で悪化する

 

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◎50歳代から徐々に増え始め、60~70歳代に多く見られます。高齢者の10人に1人は狭窄症であり、無症状も合わせると推定患者数は約240万人と言われています。

 

◎主な原因は脊柱の加齢による退行性変化(脊柱すべり症、黄色靭帯)と言われています。

 

◎加齢、重い物を運ぶ機会が多い、猫背、座りっぱなしなど同じ姿勢を取ることが多い、過去に腰痛の経験があるなどが発症を高めます。

 

◎主症状は間欠性跛行と痺れ、痛みです。重度になると膀胱直腸障害を起こします。日常生活に著しい制限が起こります。

 

※脊柱管狭窄症に似た症状として、「椎間板ヘルニア」 「末梢動脈疾患」、「糖尿病神経障害」があります。これらは下肢の痛みや痺れの症状を引き起こすため、脊柱管狭窄症との判別をする必要があります。

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◎脊柱管を構成する骨・椎間板・靭帯などによって、腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり、馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたしたものです。

 

◎馬尾神経障害は中枢神経の問題でより重症であり、膀胱直腸障害などのを異常感覚を訴えます。腱反射の消失または減弱、筋力低下を起します。この場合両脚に症状を訴えることが多いです。

 

◎神経根障害は神経根の問題であり、膀胱直腸障害はなく、腱反射も正常です。痛みや痺れは片側であることが多いですが両側の場合もあります。

 

◎脊柱管狭窄症の痺れには「馬尾神経障害」と「神経根障害」の2種類が存在します。

 

◎馬尾神経障害は重症であり、膀胱直腸障害を呈する場合は病院診療が必要になります。

 

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・膀胱直腸障害:尿意切迫感、残尿感

・性機能不全・両下肢、殿部の広範な異常感覚

・腱反射消失・アキレス腱

※痛みよりも異常感覚を強く訴える場合が多いです。

中枢神経の問題であるため、膀胱直腸障害がある場合は病院受診が必要となります。

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・腱反射、膀胱直腸障害、性機能は正常
・下肢や殿部の痛みが主な症状。片側性であることが多い。
・神経根の圧迫による痛みのため、腰椎前彎増強など影響が大きい。
※徒手療法の適応範囲となります。

間欠性跛行とは?
 

◎脊柱管狭窄症で最も特徴的な症状が間欠性跛行です。
◎間欠性跛行とは、しばらく歩くと痛みや痺れが出現し、歩行困難となりま
 すが、数分間休むことで再び歩行可能となる症状のことです。
◎前屈やしゃがむ姿勢を取ることで、神経組織の圧迫が解除されることで、
 痛みや痺れが改善されます。
◎間欠性跛行には、神経性と血管性があります。

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脊柱管狭窄症の根本的な原因は「腰椎過伸展」です。

腰椎伸展が増強することで、脊柱管の後面にある黄色靭帯がたわみ、脊柱管を通る神経・血管を後方から圧迫します。それによって、痺れや間欠性跛行が生じます。

腰椎伸展してしまう要因としては、「股関節伸展制限」、「脊柱後部の過緊張」、「腹部筋の機能不全」が考えられます。

座位や体幹の前傾、しゃがみ込みは、腰椎過伸展を軽減させます。そのため、黄色靭帯による脊柱管の圧迫が解放され、痺れや間欠性跛行が改善されます。

 

脊柱管狭窄症の治療概要
 

脊柱管狭窄症を治すためにポイントとなってくるのが股関節です。脊柱管狭窄症は股関節屈曲が入ってる状態で、体の倒れている状態を真っ直ぐに直すために腰を反って代償することで、腰椎が過前弯となり、結果的に脊柱管が狭くなっている病態です。

 

つまり治療のポイントとしては、腰をどれだけ治療しても、正常に戻ることはありません。なぜなら、股関節が屈曲しているのが本当の問題だからです。
逆に股関節が真っ直ぐ伸びた状態になれれば、腰を無理に反る必要がなくなるので、勝手に脊柱のずれが解消され、脊柱管の圧迫が解消されていきます。 

 

だからこそ、股関節前面の筋に対しての治療が脊柱管狭窄症を改善する上で大事になってきます。
また足関節、腕、胸椎、内臓などの全ての機能が運動連鎖により、繋がっているため、機能不全が起こっているものは全て治療していく必要があります。

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