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​椎間板ヘルニアの治療

ヘルニアの実態

 

ヘルニアという診断を受けると、多くの方が驚いたり不安に思うことがよくあります。特に、「軽いヘルニア」という表現を聞くと、その症状がどの程度のものなのかが分からなくなりがちです。実際に、MRIで撮影された画像を見ても、「これがヘルニア?」と思うような程度の膨らみしか確認できないこともあります。年齢が少し高くなると、無症状の人でも椎間板の膨らみが8割以上に見られるというデータもあるため、「ヘルニア=痛み」の関係は必ずしも成り立ちません。

大切なのは、ヘルニア自体が「原因」ではなく「結果」であるという視点を持つことです。腰痛や痺れを感じる場合、ヘルニアが直接的な原因ではなく、体のバランスが崩れた結果として現れる二次的な症状であることが多いのです。ヘルニアが神経を圧迫していると、神経の「情報伝達」が阻害されることはありますが、痛みそのものはその結果として脳が認識するものです。痛みの原因は、ヘルニアそのものではなく、体のバランスの乱れや歪みにあります。


テンセグリティ構造と体のバランス


下の画像を診ていただけると何となくイメージできるかと思いますが、私たちの体は「テンセグリティ構造」と呼ばれる、張力を利用した構造で成り立っています。これは、骨や筋肉、腱などが相互にバランスを取りながら支え合っている状態です。このバランスが崩れると、椎間板に過剰な圧力がかかり、ヘルニアが発生することがあります。つまり、ヘルニア自体は体の歪みやバランスの崩れが引き起こす結果の一つであり、そのバランスを整えることで、症状の改善が期待できるのです。

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​以下の動画を見ていただくと何となくイメージがわくと思います。​

椎間板ヘルニアとその診断

 

椎間板ヘルニアの診断を受けた場合、すぐにその状態を恐れる必要はありません。実際に、椎間板ヘルニアが診断された場合でも、それが痛みや痺れの直接的な原因とは限りません。MRIで確認した場合でも、ヘルニアが必ずしも症状の元凶ではないことが多いのです。多くのケースでは、ヘルニアによって神経が圧迫されても、実際には「情報の遮断」が起こるだけで、痛みや痺れは他の要因による筋肉の補償作用から生じていることがしばしばあります。

例えば、筋肉が正常に機能しなくなると、他の筋肉がその負担を補おうとし、その結果、過剰な負荷がかかり、痛みや痺れが発生することがあります。この補償メカニズムが限界に達すると、痛みとして現れるのです。

 

施術アプローチと治療法

 

ヘルニアや椎間板ヘルニアによる症状の改善には、体全体のバランスを整えることが重要です。ヘルニアに対する施術は直接的に行うことが少なく、むしろ体全体の歪みや筋肉のバランスにアプローチすることが効果的です。オステオパシーやカイロプラクティック、運動療法など、筋筋膜系に働きかける治療法が有効です。また、これらの施術には、施術者の技術が重要であり、専門的な治療が求められます。

さらに、椎間板ヘルニアの原因を深掘りすると、多くは筋筋膜系の異常による機能障害が関わっています。姿勢の悪さや過度な負担が筋膜に負担をかけ、その癒着や不具合がヘルニアを引き起こす場合があります。このような原因に対しては、筋膜の癒着を解消するアプローチが効果的です。

 

結論

 

ヘルニアや椎間板ヘルニアが痛みや痺れの原因ではなく、むしろ体のバランスの崩れや筋肉の補償によって生じる症状であることが多いということを理解することが大切です。ヘルニアが診断されても過剰に不安になる必要はなく、体全体のバランスを整えることで症状は改善されることが多いです。適切な施術を受けることで、ヘルニアそのものが解消されることもありますので、体全体を整える治療を受けることが改善への近道です。

腸管膜と椎間板ヘルニアの関連について

 

腸管膜とは?

 

腸管膜は、腹腔内で腸を支える二重膜であり、小腸、大腸、S状結腸などを覆っています。この膜は、L2(腰椎2番)から始まり、右下方に斜めに走り、最終的には右腸骨窩(ちょうこつか)に至ります。腸管膜には血管や神経が通っており、腸への血液供給や神経伝達を担っています。

 

腸管膜と痛みの関係

 

腸管膜は、腹部の重要な器官を支えるだけでなく、筋肉や腰椎の動きとも密接に関連しています。特に、大腿直筋や大腿筋膜張筋の硬さが腸管膜に影響を与えることがあり、これが腰痛の原因となることもあります。また、腸管膜は便秘や虫垂炎、アトピー、免疫疾患といった体調不良にも関わりがあるため、これらの症状がある場合には腸管膜へのアプローチが重要となります。

 

腸管膜と椎間板ヘルニアの関連

 

椎間板ヘルニアが最も多く発生する部位はL4–L5やL5–S1(腰椎4番~5番、5番~仙骨1番の間)です。この部位には腸管膜が関与しており、腸管膜根が前側から引っ張ることが原因の一つとして考えられています。この引っ張りが腰椎の動きに制限を与え、椎間板ヘルニアや腰痛を引き起こす可能性があるため、治療において腸管膜へのアプローチは非常に重要です。

 

まとめ

 

腸管膜は腰椎と深く関わっており、椎間板ヘルニアの原因として見逃されがちな部分です。腸管膜が引っ張ることで腰椎の動きが制限され、腰痛やその他の症状に繋がることがあります。腸管膜への適切なアプローチが、椎間板ヘルニアや関連する痛みの改善に繋がるため、治療の際にはこの部位を意識することが大切です。

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​現在ではあらゆる腰痛は8割が内臓由来と言われています

​こんな症状が椎間板ヘルニア

​・前屈みになると腰からお尻や脚に痛みが出る
・長時間座ると腰や脚が痛くなる
・脚の感覚がおかしい
・脚に力が入らない
・朝起きた時に痛い
​・背中を丸めると腰や脚に痺れが走る
​👆こんな症状があればもしかしたらヘルニアかもしれません

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​椎間板ヘルニア

​レッドフラッグ!絶対に注意すべき所見

​レッドフラッグとは、触ってはいけない急性腰痛(徒手療法 NG)のことで、これらを伴う腰痛症状がある場合、無理に整体の施術を受けないで下さい。まずは医療機関の受診をする必要があります。

​【医療機関の受診が推奨される場合】

​①膀胱直腸障害(勝手に尿、便が出る)
②コントールできない激烈症状
(24時間常に痛い、薬も効かない)
​③神経障害(麻痺、感覚障害)

​※尿閉・失禁および下肢筋力低下の進行は早期手術が推奨

まず、腰椎椎間板ヘルニアがどのような症状なのかをご紹介していきます。

 

ヘルニアとは、首から腰まである骨『脊椎』にある椎間板組織が飛び出してしまうことを指します。

 

ヘルニアの診断は椎間板組織が飛び出す位置によって決まることから、腰椎椎間板ヘルニアになっている場合、腰の骨の椎間板組織に問題があると言えます。

 

腰椎椎間板組織の症状の特徴は、下半身の痛みとしびれです。

 

動かしていても安静にしていても電撃が走るような痛みやしびれがあり、時に休まなければ歩けないほどの苦痛を伴います。

 

なお、腰椎椎間板ヘルニアの症状が自然に改善されることは難しく、専門的な医療機関をはじめ、整骨院、接骨院、整体院などのサポートが必要です。

 

ヘルニアの状態に合わせ、保存療法または手術が選択されます。

椎間板は、中心部にゼリー状の髄核(ずいかく)と呼ばれる柔らかい組織と、その周囲の線維輪(せんいりん)と呼ばれる丈夫な外層とで構成されています。

この椎間板の内容物が押し出され突出することを椎間板ヘルニアと呼びます。

​椎間板ヘルニアの分類と予後

◎ヘルニアの重症度は4つの分類に分けられます。

◎膨隆している程度では椎間板性疼痛が出現する可能性は少ないです。

◎臨床上、膨隆レベルでも「腰痛の原因はヘルニア」と診断されているケースも少なくありません。

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​髄核の膨隆

◎髄核の膨隆では、実質、髄核も椎間板の線維輪の中にとどまっています。

◎炎症がおこったりするリスクも無く、椎間板ヘルニアには含まれないともされています。

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​髄核の突出

​​◎髄核の突出は、髄核が痛みのセンサーが多い線維輪を破壊している状態です。

◎後縦靭帯は破れていないのがポイントです。

◎繊維輪が破壊され、浮腫や疼痛など炎症徴候が進んでいく段階となり、椎間板性疼痛が起こります。

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​髄核の脱出

◎髄核の脱出は、線維輪を突き破るため、免疫系に曝露されて椎間板性疼痛が強く発現します。

◎後縦靭帯を突き破っているので、炎症や出血を引き起こしやすい状態です。

 この辺が一般的に認識されているヘルニアの状態ということになります。

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​髄核の分離

◎髄核の分離は、椎間板との連続性がない状態です。

◎髄核が線維輪・後縦靭帯を突き破って脊柱管内に髄核が侵入しているので、激烈な痛みがでます。

◎自然寛解はするものの、激痛に耐えられず日常生活にも支障をきたすため手術を選択する例も多いです。

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​椎間板ヘルニアの予後

腰椎椎間板ヘルニアに関する研究では、椎間板が飛び出したり分離したりしている場合、自然に回復しやすいことがわかっています。これは、飛び出した椎間板が体にとって異物として認識され、免疫系(マクロファージ)が働いてその部分を取り込んで吸収していくからです。そのため、椎間板が飛び出しているほど、自然に回復する可能性が高くなります。実際、腰椎椎間板ヘルニアの約60%以上が自然に回復するとされ、予後は良好です。このことから、現在のヘルニア治療においては、まず保存療法(手術を使わずに治療する方法)が第一選択として推奨されています。

​椎間板ヘルニアの解剖学

◎椎間板は人間の背骨にあり、骨と骨の間でクッションの役割をしています。

◎中心はゼリー状の髄核で、その周辺は線維輪で層状に覆われています。 

◎この髄核がいろんな方向に動くことで、脊椎の動きを補完しています。

​疼痛の原因

◎椎間板性疼痛を感じるのは、線維輪に侵害受容器である脊椎洞神経が存在しているためです。

◎線維輪は、脊椎洞神経と交感神経の多髄節支配です。

◎髄核の突出や脱出があると、線維輪に機械的な刺激が加わり続けることで、脊椎洞神経を刺激し、椎間板性疼痛が誘発されます。

◎実際に脊椎洞神経への機械刺激で椎間板性疼痛が発現すると報告されています。

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線維輪 ➡ 痛みを感じる ➡ 神経が通っている

髄核 ➡ 痛みを感じない ➡ 神経が通ってない

​ヘルニアはなぜ起こるのでしょうか?

◎椎間板損傷は腰椎の「屈曲+回旋」が同時に起きると起きやすいと言われています。

◎研究では、線維輪のみを故意に損傷させ、圧縮・荷重をかける実験を実施しました。

 その結果、純粋な圧縮・荷重だけでは、髄核が脱出する原因にはならないことを立証してます。

​なぜ屈曲・回旋に弱いのでしょうか?

椎間板はコラーゲン繊維で構成されており、斜めに線維が走行しています。

この走行方向があることで、回旋には非常に抵抗力を発揮できます。

しかし、屈曲運動がおこれば、髄核は後方に押し出され、線維輪後方(もともと脆弱)に伸張ストレスがかかります。そこにさらに回旋が起こると、伸びきっているところに剪断力が加わる(雑巾絞りのように絞られる)ため、損傷がおこってしまうからです。

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​椎間板ヘルニアの運動学

​椎間板に屈曲・回旋負荷が増える理由

​胸郭・股関節の可動性低下

①屈曲・回旋負荷が増加する原因は、胸郭・股関節の可動性低下です。

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②胸郭(胸椎)は主に回旋、股関節は屈曲・内外旋を担っています。

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③これが制限されると、腰椎が過剰に動こうとするため負荷が増加します。

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④このため、胸郭や股関節の可動性を改善することが必要です。

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⑤腰椎への負担を軽減させ、ヘルニアの痛みの軽減や再発予防につながります。

 

胸郭・股関節の可動性低下

腰椎屈曲・回旋の増加

髄核の突出・脱出

線維輪や後縦靭帯の損傷

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​治療を受けられている方は以下にご注意ください

​屈曲・回旋負荷が生じる場面

​長時間の不良姿勢(デスクワークなど)

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​重いものを動かす作業

​日常生活で絶対に気を付けること

基本的にヘルニアの治療中は特に背骨にかかる圧を減圧させることが重要になります。

 

◎立位でも座位でも同じ姿勢は、基本的にNG.

◎立位姿勢で椎間板に100~120の圧がかかります。

◎座位姿勢では200ほどの圧がかかるため特に長時間の座位姿勢はNGとなります。

(30分毎に立つ)

 

生後12ケ月までに椎間板内に軟骨終盤を貫く細動脈が発達し、成人では椎間板内は無血管となります。

椎間板への栄養は、椎間板への圧縮と減圧が起こることで椎間板内に間質液が吸収されますが、減圧と圧縮で栄養が供給されるスポンジの役目を果たします。

このように適切な椎間板への圧縮と減圧を加えるには、屈曲も伸展も行う必要があります。

このため、椎間板への栄養流入には、動くこと(体位変換)が重要となりますので、椎間板の良い栄養状態を保つには同一姿勢はNGとなります。

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