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ばね指(狭窄性腱鞘炎)と全身の関係
当院の考える根本的アプローチ

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1. ばね指は「指だけの問題」ではありません

ばね指は、多くの場合 指先に症状が出る
“最後の出口” です。

特に 指の末端に近いほど、
「全身の機能低下が進んでいるサイン 」と考えられています。

体幹(胸椎・肋骨・肩・前腕)

全身の緊張・自律神経

ホルモンバランス

血糖・代謝

筋膜ライン(全身の張力)

これらの乱れが積み重なり、最終的に
「指の腱鞘」という“細いトンネル部分”で破綻が起こるのです。

👉 つまり、ばね指は“局所だけ治しても再発しやすい”代表疾患です。
👉
全身調整局所治療両方が必要です。

2. ばね指のメカニズム

腱と腱鞘の関係

指を曲げる腱が、腱鞘という“トンネル”を通ることでスムーズに動きます。

しかし、

摩擦

炎症

腱や腱鞘の肥厚(分厚くなる)

が起こると、腱がトンネルを通る際に引っ掛かる → カクッと音がする → 曲げ伸ばしが痛くなる
これが「ばね指」です。

手の反復運動 

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摩擦

炎症

肥厚

肥厚しやすい理由 

屈筋腱の腱鞘は、縦と横の網目構造の靭帯で構成されており、線維の目が
粗く、摩耗して線維化しやすいと言われています。

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3. ばね指になりやすい人の特徴

当院が臨床経験・研究データからまとめると、以下の傾向があります。

① 指先をよく使う人

パソコン・スマホ・調理・手作業・育児など

② 無意識に力みやすい人(脱力が苦手)

力を抜く訓練でかなり防げます。

③ 背中(胸椎)が固い人

*胸椎の可動制限は、手の腱鞘の回旋動作を減らし“摩擦”を増やします。

④ ホルモンバランスの変化

*特に更年期・産後の女性は発症リスクが上昇。

⑤ 関節リウマチ・へバーデン結節がある人

⑥ 糖尿病の人(重要)

医学的にも 発症率2〜3倍 といわれます。

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4. 糖尿病の人がばね指になりやすい理由(科学的解釈)

① 腱・腱鞘の“糖化”(AGEs)

高血糖が続くと、

腱のタンパク質が糖化し硬くなる

腱鞘が分厚くなる

しなやかさが失われる

結果 → 腱が滑らず引っかかる

② 手指の末梢血流が悪くなる

糖尿病性の微小血管障害により、

栄養が届きにくい

炎症が治りにくい

組織の修復力が低下

→ ばね指が慢性化・多発化しやすい

③ 再発しやすい

手術をしても再発率が高いことも報告されています。

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5. 腱鞘炎・ばね指が起きる流れ

指を過剰に使う
   ↓
腱と腱鞘の摩擦が増える

   ↓
炎症
   ↓
肥厚
   ↓
腱がトンネルを通れなくなる
   ↓
痛み・引っ掛かり(ばね現象)

*腱の腫れた部分が腱鞘を通る際に引っ掛かりが生じ、
 カクンと跳ねるように通過するようになります。
​ これを「ばね指」といい、腱鞘炎が進行すると現れます。 
*MP関節部の靱帯性腱鞘に起きやすいです。 
*MP関節やPIP関節の痛みと腫れ、こわばりが出現します。 
*好発年齢は中年期以降で男女比は1:6です。

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​屈筋腱が腱鞘にひっかかり、指が伸ばしにくくなります。
力を入れて伸ばそうとすると急にひっかかりが外れてバネが弾けたような動きになります。
指を曲げるときに腱が腱鞘にひっかかり痛みが発生します。

6. “手だけが原因じゃない”

全身とばね指の深い関係 

① 胸椎の硬さ → 手指の負担増


胸椎が固まると、腕全体の運動が乱れ、腱鞘の摩擦が増える。

② 上腕・前腕のねじれの代償

肩が固い → 前腕にねじれ → 腱鞘へのストレス

③ 姿勢(スマホ・PC)

前腕が回内位に固定されると第1背側区画(ドケルバン病)に負担が集中。

④ 自律神経(力みの癖)

常に交感神経優位 → 手の筋・腱が硬くなる → 炎症が起きやすい

胸椎の硬さを例に挙げてみましょう。

ではなぜ、胸椎の可動域制限が起きるのか?
その理由を考える必要があります。

例えば・・・
​内臓を取り巻く漿膜(しょうまく)が固くなることでも
胸椎の硬さを生み出します。
(臨床上高確率です)
​👇

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こういった事が解決されないと
例え手術をしても
​また再発する可能性があります
😭

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内臓から脊髄(自律神経・求心性線維)への入力

・内臓のストレス

・炎症

・過緊張

・消化器・心臓・肺などの機能低下

これらが 内臓‐体性反射(viscero-somatic reflex) を引き起こします。

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脊髄レベル(胸椎)の反射興奮 → 胸椎の硬さへ

胸椎の該当レベルの筋緊張が高まり、胸椎の可動性が低下

 

胸椎の硬さが腕~手指へ連鎖する

胸椎の固着
→ 肩甲骨の代償
→ 上腕のねじれ
→ 前腕の過緊張
→ 手指の腱鞘炎(ばね指)へ

いかがでしょうか。

ばね指といってもかなり深いところへの考察が、

この一例でもお解りいただけると思います。

​ですので手術をしてとりあえず痛みが取れても安心できないのです。

7. 治療の考え方

手術の前に“4週間の保存療法” 

医学的ガイドラインでも
腱鞘炎の第1選択は保存療法(運動療法・徒手療法)とされています。

※実際にはもう少し長く時間を取れば手術なしでも治る場合があります。

 

保存療法に含まれるもの

局所の腱鞘リリース

炎症軽減(徒手・温冷療法など)

胸椎・肩・前腕の可動改善

神経系の調整(力みのリセット)

生活習慣の改善(負荷を減らす)

セルフケア(運動療法)

 

4週間で全く改善がなければ、
ドケルバン病・ばね指は手術も検討されます。

8. 手術について(正しい理解)

手術は「狭くなった腱鞘を開放する」方法ですが、

  • 原因が全身にある場合は再発しやすい

  • 糖尿病・更年期・リウマチの方は再発率が高い

  • 術後も全身ケアを続けることが重要

という点を理解しておく必要があります。

9. 当院の考える“根本改善アプローチ”


① 局所+全身の両方を見る

ばね指は“指のトラブル”ではなく
全身の機能低下の最終出口 と考えています。

② 胸椎・肩・前腕・手根骨の細かい調整
③ 自律神経の調整(リラックスできる身体づくり)
④ 血流改善(微小循環の最適化)
⑤ 必要に応じて栄養・代謝(AGEs対策)もアドバイス

10. 生活で気をつけること(セルフケア)

・指の酷使を避ける

・長時間の作業は途中で休む

・スマホを持たず、机に置いて使う

・手首をねじらない姿勢を意識

・胸椎ストレッチ

・脱力練習(力を抜く習慣)

・指血流アップの運動を行う

指の酷使を避けることの重要性

施術によって指の痛みが少し楽になると、

すぐに元のように使い始めてしまう方が多く見られます。
しかしこれでは、炎症が治りきらず いつまでも回復が遅れ、

再発を繰り返す原因 になります。

 

多くの人に足を捻挫して腫れているときは休ませるのに、
なぜか「手だけは休ませずに使い続けてしまう」傾向があります。

指の腱や腱鞘も、足首と同じように 炎症がある時はしっかり休ませることが必要 です。

まとめ

 

腱鞘炎やばね指は“腱と腱鞘の摩擦から始まる炎症”です。

しかし原因は指だけではなく体幹〜腕〜自律神経まで広く関与します。

特に糖尿病・更年期・リウマチはリスクが高いです。

保存療法(4週間)は医学的にも第一選択となっています。

全身から整えることで再発を防ぎ、根本改善が期待できます。

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