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#03 画像診断が届かない、隠れた4つの経路 自律神経軸

  • 3月21日
  • 読了時間: 5分

骨盤の痛みが施術で戻り続ける本当の理由

下下腹神経叢という盲点


「仙腸関節を施術してもらうと、その日は楽になる。でも数日で戻る」

「産後から骨盤まわりの痛みが続いていて、どこに行っても改善しない」

「月経の前後に骨盤帯痛が強くなる」


これらに共通しているかもしれない、あまり知られていない経路があります。

下下腹神経叢(かかふくしんけいそう/inferior hypogastric plexus)です。


下下腹神経叢とは



腹部骨盤神経叢の全体像

下下腹神経叢は、骨盤内に存在する自律神経の集約点です。

膀胱・子宮・卵巣・直腸・S状結腸など、骨盤内のほぼすべての内臓がここを介して神経支配を受けています。


この神経叢は仙骨の前面・腸骨の内側に位置しており、解剖学的に仙腸関節のすぐそばにあります。


つまり、骨盤内臓器の自律神経の緊張は、構造的に仙腸関節まわりの組織と隣接しているということです。


下下腹神経叢の上流

どこから緊張が来るのか

腹部骨盤神経叢の全体像

下下腹神経叢は独立して存在しているわけではありません。

腹部から骨盤にかけて走行する巨大な腹部骨盤神経叢の末端部にあたります。


この神経叢は大動脈に沿って横隔膜レベルから骨盤底まで連続しており、上流には2つの主要な入力があります。

腹部骨盤神経叢の全体像

一つは迷走神経幹です。

食道壁を伝って胸郭から腹部へ入り、腹腔神経節付近で合流します。


もう一つは胸内臓神経です。

横隔膜の脚を直接通って腹腔に入ります。



つまり、呼吸・胸郭の状態・慢性的なストレスによる交感神経の過緊張は、この経路を通じて骨盤内の神経叢にまで影響を及ぼすことがあります。


骨盤の痛みが

「ストレスが強い時期に悪化する」

「深呼吸をすると少し楽になる」

という方では、この上流からの影響が関与していることがあります。


求心性線維の優位性

内臓から脳への信号が多い


腹部骨盤神経叢には交感神経と副交感神経の軸索が混在

腹部骨盤神経叢には交感神経と副交感神経の軸索が混在していますが、解剖学的に重要な特徴があります。


求心性線維(内臓から脳への信号)の数が、遠心性線維(脳から内臓への信号)より非常に多いという点です。


これは何を意味するかというと、骨盤内臓器の状態は絶え間なく脳に情報を送り続けているということです。

骨盤内の慢性的な炎症・緊張・圧力の変化は、脊髄・脳幹レベルで処理され続け、やがて中枢感作

つまり痛みの感受性が全体的に高まった状態を引き起こすことがあります。


「仙腸関節を施術しても痛みが完全に取れない」

「施術後しばらくは楽だが、じわじわ戻る」


という経過には、この中枢感作の関与を考えることがあります。

局所の組織だけでなく、内臓からの持続的な求心性入力が変わらない限り、痛みの閾値は下がったままになりやすいということです。


平滑筋の緊張は意識でコントロールできない


下腹神経叢が過緊張状態

内臓の壁は平滑筋という筋肉でできています。

この筋肉は自律神経が支配しており、骨格筋とは異なり、意識的に緩めることができません。


下腹神経叢が過緊張状態になると、骨盤内臓器の平滑筋が慢性的に収縮した状態が続きます。この緊張は骨盤底・仙骨・腸骨まわりの結合組織に伝わり、仙腸関節まわりに慢性的な圧がかかり続けます。


筋筋膜をいくら緩めても、自律神経の緊張そのものが変わらなければ、時間が経てば同じ状態に戻ります。


これが「施術を受けるとその場は楽になるが、また戻る」という繰り返しの一因として考えられます。


この経路が関与しやすい状況



産後、出産時の組織へのストレスや、産後の骨盤底筋群の機能変化が、骨盤内の自律神経環境に影響を与えることがあります。


産後から続く腰痛・骨盤帯痛がなかなか改善しない場合、この経路の観察が必要なことがあります。


月経に関連した症状、月経前後のホルモン変化は、骨盤内臓器の緊張パターンに影響します。


月経のたびに骨盤帯痛が強くなるという方では、下腹神経叢の状態が関与していることがあります。


慢性的なストレス、自律神経の緊張は精神的・肉体的なストレスによって持続します。

仕事が忙しい時期に骨盤や腰の症状が悪化するという方では、上位の自律神経系、迷走神経幹・胸内臓神経を経由した入力が骨盤内の緊張として現れていることがあります。


膀胱炎・子宮の問題の既往 過去に骨盤内の炎症や感染があった場合、組織の癒着や神経の過敏化が残存し、下腹神経叢の緊張パターンが慢性化していることがあります。


この場合、求心性線維を介した中枢感作が定着していることがあります。


S状結腸との関係

腸神経系からの入力


S状結腸は骨盤内でS字状に曲がり、下腹神経叢のすぐそばを走行しています。

腸管壁内には腸神経系と呼ばれる内在性の神経ネットワークが存在し、消化管の平滑筋と腺の活動を自律的に制御しています。

腸神経系とフィードバックループ

この腸神経系は椎前神経節との間に短い・長いフィードバックループを形成しており、S状結腸の状態は腸管壁内だけでなく、骨盤内の神経叢全体に影響を与えることがあります。

S状結腸に問題があると、この部位を通る血管(門脈系)が鬱血します。


その副側路として奇静脈系が働きますが、これも鬱血すると腰まわりの腰行状静脈まで鬱血が及び、骨盤帯痛・腰痛を引き起こすことがあります。


仙腸関節や骨盤帯の施術を繰り返しても痛みが取り切れない場合、

S状結腸、腸神経系、下腹神経叢という経路の関与を観察することがあります。


「骨盤の歪み」だけが原因ではない


骨盤の痛みを「骨盤の歪み」

骨盤の痛みを「骨盤の歪み」として説明することがあります。

しかし歪みがあったとしても、

それが「なぜ起きているのか」「なぜ戻るのか」は別の話です。


骨盤内の自律神経が慢性的に緊張していれば、骨盤を整えても内側からの圧力が変わらず、歪みは繰り返されます。


さらに求心性線維を通じた中枢感作が定着していれば、局所の組織状態が改善しても痛みの感受性は高いままになることがあります。


円命堂では、骨盤・仙腸関節の局所的な状態だけでなく、骨盤内の自律神経環境・上流からの入力経路・腸管の状態がどういう状態にあるかを観察しながら施術を組み立てています。


骨格から整えることが大前提ですが、それだけでは届かない層がある

その層に対してどうアプローチするかが、改善が続くかどうかの分岐点になることがあります。


身体の反応が、答えです。



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