本人はストレスを感じていない
無意識の緊張と食いしばりの関係

前回は、なぜ右で食いしばる人と、左で食いしばる人がいるのか
という問題を、身体の左右差と代償から考えた。
右の顎が硬いから、右が悪いとは限らない。
身体は動きにくい場所を守るために、別の場所を固めることがある。
では、その身体を整えても、また食いしばりが戻ってくる人はどう考えるのか。
そこで出てくるのが、「特にストレスはありません」という言葉である。
しかし身体を見ると、顎が硬い。肩に力が入っている。呼吸が浅い。
眠っている間も食いしばっている。
本人はストレスを感じていない。
それなのに、なぜ身体は緊張しているのか。
今回は、この問題を考える。

食いしばりとストレスには関係がある
食いしばりと心理社会的要因との関連は以前から研究されている。
米国国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)も、ブラキシズムに関係する要因として、
ストレス。気分。精神的な緊張。不安。
などを挙げている。
近年の研究でも、特に起きている間に起こる覚醒時ブラキシズムは、睡眠時ブラキシズムより心理社会的要因との関連が強いことが報告されている。
しかし、ここで注意が必要である。食いしばり=ストレス
と単純に考えることはできない。
ブラキシズムは多因子的であり、心理的要因だけで説明できるものではない。
だから円命堂でも、「ストレスがありますね」と簡単に決めつけることはしない。
「ストレスはありません」は本当である
食いしばりが強い人に、「最近、ストレスがありますか」と聞く。
すると、「特にないです」「仕事は忙しいですが、いつものことです」
「別に悩んではいません」と答える人がいる。
これは決して珍しくない。
そして、多くの場合、本当にそうなのである。
本人が隠しているわけでも、気づいていないふりをしているわけでもない。
仕事にも慣れている。家族のこともいつものことである。
責任を背負うことにも慣れている。
多少忙しくても、それが普通になっている。だから本人の意識としては、
「特にストレスはない」のである。
しかし、身体の反応は別である
ここで分けて考えたい。本人がどう感じているか。
そして、身体がどう反応しているか。
これは必ずしも同じではない。意識では大丈夫だと思っていても、
顎を噛みしめる。肩が上がる。呼吸が浅くなる。
首から後頭部が固まる。眠っている間にも顎の筋肉が働く。
そうした身体反応が残ることがある。
特に睡眠時ブラキシズムについては、顎の筋活動の多くが睡眠中の覚醒反応と関連し、その前に中枢神経系や交感神経系の生理的な活性化がみられることが報告されている。
つまり、本人が眠っていて意識していない時間にも、身体ではさまざまな反応が起きている。「自覚がない=身体にも負荷がない」とは限らないのである。

「慣れている」と「負荷がない」は違う
ここは非常に重要である。人間は環境に慣れる。
忙しい生活にも慣れる。責任の重い仕事にも慣れる。
痛みがある生活にさえ慣れる。最初は大変だったことでも、何年も続けば、
「これが普通」になる。
しかし、慣れたからといって、身体への負荷がゼロになったとは限らない。
本人にとって当たり前になった状態を、身体は別の方法で処理し続けていることがある。
その一つとして、食いしばり。浅い呼吸。抜けない肩の力。
慢性的な首の緊張。などが現れている可能性を考える。
だから円命堂では、「ストレスがありますか」という質問だけで身体の状態を判断しない。
身体は言葉では答えない
身体は、「私は今、緊張しています」とは言わない。
代わりに、呼吸。筋肉の緊張。左右差。動き。姿勢。
睡眠。痛み。といった形で反応する。
例えば、本人はリラックスしているつもりなのに、息を吐いても肩が下がらない。
顎を緩めても、数秒するとまた噛んでいる。
仰向けになっても胸郭がほとんど動かない。
眠っているはずなのに、朝になると咬筋が疲れている。
こうした反応がある。
当院が見ているのは、本人がストレスを感じているかどうかだけではない。
身体が本当に警戒を解いているかということである。

食いしばりを「心の問題」にしない
ここでもう一つ重要なことがある。
身体の警戒反応という話をすると、
「結局、精神的な問題なのか」
と思うかもしれない。
そうではない。
身体が警戒する理由には、
痛み。呼吸のしにくさ。¥睡眠不足。
長時間同じ姿勢で働くこと。
過去の外傷。身体的疲労。
生活環境。心理的な負荷。
さまざまなものがある。
それらが複数重なっていることもある。
だから、「食いしばるのはストレスに弱いから」
という話ではない。
食いしばりを本人の性格や精神力の問題にしてしまえば、身体で起きていることを見失う。
円命堂では「なぜ緊張が抜けないのか」を見る
当院では食いしばりがある場合、顎だけを見ない。
頭蓋底。頸部。第一肋骨。
胸郭。横隔膜。呼吸。身体の左右差。
日常動作。睡眠。
必要に応じて、こうした要素をつなげて確認する。
目的は、「リラックスしてください」と本人に努力させることではない。
本人が頑張って緩めなくても、身体そのものが緩める状態へ近づけていくことである。
次回|なぜ身体はいつまでも警戒を解けないのか
ここまで来ると、次の疑問が出てくる。
本人はもう慣れている。
今、大きな悩みがあるわけでもない。
身体にも大きな異常は見つからない。
それなのに、
なぜ身体は警戒を解かないのか。
なぜ何年も同じ場所を固め続けるのか。
次回は、
今起きていることだけではなく、その身体がこれまで何を経験してきたのか
という視点から考える。
過去の痛み。
長期間の緊張。
生活環境。
身体の使い方。
そうした負荷が積み重なったとき、身体に何が残るのか。
シリーズ第4回では、
生活史に蓄積した負荷
という観点から、食いしばりを考える。
医療機関・歯科への相談を優先した方がよいケース
歯が欠けている。
歯が強く擦り減っている。
口が開きにくい。
顎関節に強い痛みがある。
噛み合わせが急に変化した。
こうした場合は、歯科・口腔外科での評価を優先する。
また、睡眠中の大きないびき、呼吸が止まる、強い日中の眠気などがある場合も、睡眠の問題について医療機関へ相談する必要がある。
整体は医療機関で行う診断・治療の代替ではない。
「感じていない」ことと「身体が反応していない」ことは違う
食いしばりがある。しかし本人は、
「ストレスなんてありません」と言う。
その言葉を否定する必要はない。
本人にとっては、本当にそうなのである。
ただし、意識が大丈夫だと判断していることと、
体が完全に警戒を解いていることは同じではない。
身体は言葉では答えない。
顎。首。肩。呼吸。睡眠。
そうした反応として現れる。
だから円命堂では、
食いしばりだけを止めようとはしない。
なぜ身体がまだ緊張を必要としているのかを見る。
食いしばりをなくすのではない。
食いしばらなくても大丈夫だと身体が判断できる条件を取り戻す。
これが、このシリーズを通して考えている基本である。
関連記事
第1回|なぜ人は歯を食いしばるのか? 身体を守る防御反応から考えるhttps://www.enmeidoukurashiki.com/post/bruxism-body-defense-kurashiki
第2回|なぜ右で食いしばる人と、左で食いしばる人がいるのか※今回の記事公開後、実際のURLを挿入
当院について
総合整体院 円命堂 倉敷店では、痛みや硬さがある場所だけを見るのではなく、身体全体のつながりから不調の背景を考えている。
食いしばりについても、顎関節だけでなく、頭部・頸部・胸郭・横隔膜・呼吸・全身の緊張や動作まで含めて評価する。
倉敷市呼松を中心に、水島・玉島・児島・真備・早島・総社・岡山市・玉野市など岡山県内各地、また県外からの来院もある。
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「特にストレスはない」のに顎が硬い、肩の力が抜けない、眠っている間も食いしばる。本人の自覚と身体の警戒反応が一致しない理由を、倉敷の整体院・円命堂が考える。
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本人は「ストレスはない」と感じている。それでも顎が硬く、肩に力が入り、眠っている間も食いしばる。意識と身体の反応は本当に同じなのかを考える。
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ストレスの自覚はないが顎と肩に緊張が残る女性|倉敷 円命堂
【OG/SNS投稿用短文】
「特にストレスはありません」
それでも、顎は硬い。肩の力が抜けない。眠っている間も食いしばる。
本人が感じていることと、身体が反応していることは、本当に同じなのか。
【シリーズ名】
食いしばりを身体から考える
【シリーズ構成】
第1回なぜ人は歯を食いしばるのか?|身体を守る防御反応から考える
第2回なぜ右で食いしばる人と、左で食いしばる人がいるのか|身体の左右差から考える
第3回|今回本人はストレスを感じていない|無意識の緊張と食いしばりの関係
第4回|次回なぜ身体はいつまでも警戒を解けないのか|生活史に蓄積した負荷から考える
【シリーズ共通の締め】
食いしばりをなくすのではない。食いしばらなくても大丈夫だと身体が判断できる条件を取り戻す。
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ストレスの自覚がなくても身体に緊張が残ることがある。食いしばりを意識と身体反応の違いから考える。
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【記事末尾に置く医療上の注意書き】
※本記事は食いしばりや身体の緊張について一般的な情報と当院の臨床的な考え方を紹介するものであり、医学的診断を行うものではない。歯や顎関節の異常、強い痛み、睡眠時無呼吸が疑われる症状などがある場合は、歯科・口腔外科・医療機関へ相談してほしい。
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