top of page
ゴルフ

​なぜ、運動療法が必要なのか?

無意識レベルの動作改善へ

 

昭和の時代では、筋肉の力を測る「筋力テスト」で筋力が低下している箇所を確認し、それを改善することが目標でした。また、関節の動きの範囲を測る「関節可動域テスト」で可動域に制限があれば、それを正常な状態に戻すためにストレッチや関節の運動が行われていました。これらの基本的な方法は、今でも大きく変わっていないです。

 

しかし、実際の動きは、1つの筋肉や関節だけで行われているわけではありません。体を動かすときには、複数の筋肉や関節が協力し合いながら動いています。そのため、運動療法ではこうした「筋肉同士や関節同士の連携(運動連鎖)」を考えた上で、体の動かし方を修正したり、うまく使えるようにトレーニングすることが重要です。

 

当院では単純に運動の回数や強度を増やすだけではなく、「動きの質」を向上させるプログラムを、その人の課題に合わせたオーダーメイド式で設計する必要があると考えています。

 

例えば、腰や股関節の動きを一時的に改善したとしても、日常生活やスポーツの中で頻繁に行う「クセのある動作」を直さなければ、再び症状が現れてしまいます。

 

ただ筋肉や関節を治療するだけでなく、「体の使い方」というソフト面もアプローチ対象とし、動作をより機能的に無意識でコントロールできるようになるための「脳トレ」のようなアプローチが必要であり、最終的には無意識レベルで正しい動作への修正をゴールだと考えています。

プライベートのヨガレッスン

筋肉の累積疲労損傷
 

腰痛や膝の痛みなどの「運動器の痛み」には、大きなケガや腫瘍、感染症などの明確な原因がある場合を除き、多くはその人の長年の姿勢や生活習慣、仕事、スポーツなどが関係しています。

 

これらの生活習慣によって、特定の筋肉や関節に小さな負担が何度も繰り返し、徐々に体にダメージを与える「筋肉の蓄積疲労損傷」が起こります。
 

小さな負荷が長時間かかり続けると、筋肉や関節の耐久力が少しずつ低下していきます。これにより、普段なら問題がないような動きでも、あるとき急に痛みが出ることがあります。

 

例えば、車を運転する際、腰を丸めた状態(骨盤が後ろに傾いた状態)で長時間座ると、背骨(椎間板)にずっと圧力がかかります。

こうした負荷が積み重なり、運転後に立ち上がるときなど、特に大きな動きをしていないのに腰が痛くなることがあります。
 

こうした日常の「無意識のストレス」は、体の悪い姿勢や誤った動き方が原因であることが多いです。この原因を取り除き、組織にかかる負担を減らすことで、筋肉や関節の耐久力は回復します。

筋肉の不均衡が引き起こす悪循環
 

体の筋肉は「姿勢を維持するための筋肉」と「動きを起こす筋肉」に分けられます。

 

姿勢を維持する筋肉(姿勢筋)は、疲れやストレスが溜まりやすく、硬くなりやすい傾向があります。

 

一方で、動きを起こす筋肉(相動筋)は、緩みやすく、力が弱まりやすい傾向があります。
例えば、背中の筋肉が硬くなりすぎると、それに対する反対の筋肉(お腹の筋肉)は力が入りづらくなります。

 

このような筋肉のバランスの乱れを「マッスルインバランス」と呼びます。このマッスルインバランスが起こると、正しい姿勢や動きが保てなくなり、さらに筋肉の不調を引き起こす悪循環に陥ります。
 

また、関節には「よく動くべき関節」と「安定するべき関節」があります。このバランスが崩れると、体全体の動きが乱れる原因になります。

 

例えば、股関節が硬くなると、周りの膝や腰の関節に余計な負担がかかり、それがケガや痛みの原因になることがあります。

痛みや不調を解消するためには、痛みのある箇所だけを治療するのではなく、体全体の動きや姿勢のバランスを見直すことが重要です。

 

そのため、体の使い方を評価し、筋肉や関節の働きを正しくコントロールできるように「脳と体の連携」を高める筋機能改善法が求められます。
 

こうした筋機能改善法を続けることで、体の負担を減らし、痛みの再発を防ぐことができるのです。

 

最初から完璧な動きを目指すのではなく、「今より少しでも良くする」という意識で進めることが大切です。
 

腰痛治療における運動療法

 

最近では、コルセットなどの着脱可能な硬性または軟性の腰椎固定装具は、慢性的な腰痛の治療にはあまり効果がないと言われています。また、慢性腰痛に対する脊椎固定術(手術)の痛みを軽減する効果は、認知行動療法や運動療法などの非手術的な治療法と同じくらいであるとされています。さらに、最新の研究では、脊椎固定術を行っても約35%の方は腰痛が改善しないというデータも報告されています。

 

運動療法を取り入れる理由
 

当院が目指しているのは、患者さまが「治った」と実感できる状態を提供することです。治療を受けて一時的に痛みがなくなったとしても、その後また痛みが戻ってきてしまうのであれば、それは本当の意味で「治った」とは言えません。

 

大切なのは、患者さま自身がご自身の痛みを理解し、再発しない身体を作り、根本的に痛みが改善された状態になることです。

そのために重要なのが、患者さまご自身で動くことで痛みをコントロールし、再発しない体を作る「運動療法」です。治療家が行う徒手療法(私たちが患者さまの身体に触れて治療すること)と合わせて、患者さま自身が運動療法を取り入れることで、より効果的な改善が期待できます。

 

根本的な痛みの改善に役立つ理由
 

痛みの原因の一つとして、筋肉の「硬結(こりかたまり)」があります。硬結ができると、その周りの血管に血液のうっ滞(流れが滞ること)が起こり、これが痛みの原因になります。

 

運動療法は、こうした硬結ができにくい体を作ることを目指します。

人間の体は動きやすい方向が決まっています。たとえば、腰椎(腰の骨)は反る動きが得意ですが、この動きによって背中の筋肉が縮み、硬結ができやすくなることがあります。

 

運動療法では、このような動きの癖を改善し、硬結ができない体へと導きます。たとえば、反り腰を防ぐために腹部の筋肉を鍛えるなどの方法を用います。

 

運動療法を成功させるための注意点
 

運動療法を効果的に行うためには、いくつかの注意点があります。特に重要な2つを以下にご紹介します。

 

「代償」を入れないこと
 

正しい運動ができていないと、体が普段使っている筋肉を無意識に頼ってしまい、本来鍛えるべき筋肉をうまく使えないことがあります。これを「代償」と言います。代償が入った運動は、かえって痛みを悪化させる場合もあります。運動療法では、正しい運動を身につけることが何よりも大切です。

 

「緩む=鍛える」という考え方
 

筋肉には「相反神経抑制」という仕組みがあります。これは、一方の筋肉が収縮すると反対側の筋肉が自然に緩むという機能です。たとえば、腰の筋肉が硬い場合、腹部の筋肉を鍛えることで腰の筋肉が自然に緩むようになります。つまり、正しく運動療法を行うことで、硬い筋肉を直接緩める必要がなくなるのです。

 

まとめ
 

運動療法は、患者さまがご自身で痛みをコントロールし、再発を防ぐために非常に効果的な治療法です。正しい方法で行うことで、痛みの根本改善が期待できます。

運動療法を始める際には、正しい方法を学び、注意点を守りながら進めていくことが大切です。
 

bottom of page